気づくことと動くこと
暑い日が続いているが、今日は木曜日だからあと1日働けば週末がやってくる。明日の英気を養うために夕飯はそばにしよう。僕は天丼も好物だから、天丼も食べよう。
固い決意、断固たる決意だ。僕は帰路こうつぶやいた。
「せいろの大盛とミニ天丼だ。食うぞ。」
午後7時、そば屋の暖簾をくぐる。店内は座れないほどではないが賑わっている。暑い日にはそばが食いたくなるものだ。
席に案内されるなり僕は「せいろ大とミニ天丼」とはっきり注文した。
すぐに隣の客も続ける「せいろとミニカツ丼」。
割烹着を着たおばちゃんは、厨房に向かってこう言った。
「せいろ大とミニカツ丼」それと「せいろとミニカツ丼」
おい、ちょっ、待てよ。僕の中のキムタクが顔を出しそうになった。
だが、僕はキムタクではないので、割烹着を着た愛想の良いおばちゃんに怪訝な目をむける。
おばちゃんは、にこやかに「ミニ天丼とせいろ大、ちゃんと通っているよ。」と僕に言う。
違うよ、おばちゃん。おばちゃん忙しいから思っていることと言っていることが違うよ。内心僕は叫んだ。だが、僕も疲れている。僕の聞き間違いかもしれない。おばちゃんがにこやかに大丈夫っていうから、信じてみよう。
「おまたせ」
おばちゃんは満面の笑みでせいろ大とミニカツ丼を持ってきた。